医学部の授業でも取り上げられがちだと思うマイケルサンデル先生の本。
想定Qに対する回答を必ず用意してあり、感心しながら読んだ。人として生きるというのはどういうことか、その本質を考えさせられた。人の幸せは生涯に得られる快楽の総量と苦痛の総量の差分or割合で定義されるという考えを持っていた。功利主義寄りな考えだが、本書の功利主義批判を見て少し考えが変わった。
倫理なのか道徳なのか哲学なのか区別つかないが、非常にdisputable な話題を扱っている。便乗値上げ、徴兵制、代理母出産(ベビーM事件)、アファーマティブアクション、同性婚など 何が正解かでなく正義(道徳的正しさは)とは何かを説いている。
導入部の二者択一ばかりに知られるが、あれはあまり本質的でない。これは功利主義とリバタリアニズムに席巻され、「道徳」などに政治が関わるべきでないと考え、「全てを個人の自由」に丸投げすることで、結果的に危機へと向かいつつある現代社会に対する警鐘だ。最終的には各々が共同体に主体的に関わり、信条・宗教の対立を回避するのではなく、話し合う、共同体主義へと向かう。イデオロギーの馬鹿げたぶつけ合い、やその回避ではなく、他者との対話によって各々が道徳を考えること。
功利主義=最大幸福butマイノリティ迫害、自由主義=個人の人権(自由)尊重but背景の異なる人同士の平等の基準は曖昧、合意さえあれば正義と言えるのか、共同体主義=共同体内での道徳観や共通する善を促進する(サンデル教授の主張)。前者の2つはとても西洋的(理詰めで合理的)で、戦後日本が追求してきた考え方だと思う。3つ目は古き良き(?)日本の感性にしっくりくる。教授の妻は日本生まれらしいが、強い影響があるのかな?
印象に残ったフレーズは「満足した豚であるより不満足な人間であるほうがよく、満足した愚か者であるより不満足なソクラテスである方がよい…」。

これからの「正義」の話をしよう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
- 作者: マイケルサンデル,Michael J. Sandel,鬼澤忍
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2011/11/25
- メディア: 文庫
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